2012年8月15日水曜日

見つめる瞳

今,日本中で一番注目されている「少女」に会いに行きました.場所は上野公園にある東京都美術館.炎天下,蝉時雨に包まれた公園内に「少女」の待つ建物はありました.マウリッツハイス美術館展はオランダ17世紀のフランドル絵画作品の展示プロジェクトであり,人気のフェルメールはじめレンブラントらの作品が多数展示されました.
私が「真珠の耳飾りの少女」を初めて目にしたのは,12年前に開催された「フェルメールとその時代」展(大阪市立美術館)のポスター写真にてです.暗闇から振り返る少女の瞳が実に印象的で,画家フェルメールの名もその時記憶に刻まれました.
2007年東京本社に転勤になった年に丁度,「フェルメール≪牛乳を注ぐ女≫とオランダ風俗画展」(国立新美術館)が催され,フェルメール作品を直に鑑賞することができました.「牛乳を注ぐ女」はその色使いや光の捉え方など「少女」に共通する点が散見され,その絶妙な筆使いに鮮烈な印象を持ちました.
さて,「少女」は多数の観客が居並ぶ一室の奥正面にひとり佇んでいました.遠くからでもそのターバンの青と衣服の黄色は視覚で捉えられ,見えるはずもない瞳はすでにこちらを見つめているかのようです.やがて「少女」と間近での対面となります.うつろに振り返るその瞳は何をみつめているのか,少し開いたつやめく唇は何を語ろうとしているのか・・・実に神秘的でありながら,この「少女」はそのあたりにいるような気にもなります.その不思議さがこの絵の魅力ではないかと思います.鑑賞する者に様々な想像をかきたてる名作です.今夜は夢の中で「少女」ともう一度出会えそうな気がいたします.

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