2017年1月14日土曜日

MILES AHEAD

ジャズ界の帝王マイルス・デイヴィス(1926-1991)の1970年代後半の空白の5年間を追った映画「MILES AHEAD」は,監督ドン・チードル自らが主役を演じ,マイルスの狂気に満ちた虚構と現実を見事に描き出していました.  マイルス・デイヴィスはイリノイ州オールトンに生まれ,父は当時黒人としては数少ない大学出であり裕福な歯科医でした.13歳からトランペットを始め,ブラスバンドに入り,クラシックの個人レッスンも受けていました.17歳で地元のスウィングバンドの奏者として活躍していましたが,ある時聴いたチャーリー・パーカー(サクソフォン),デイジー・ガレスピー(トランペット)による演奏スタイル“ビバップ”に衝撃を受け,ニューヨークに出向くこととなりその後の活躍へとつながります. マイルスの奏でるミュートサウンドは“卵の殻の上を歩くよう”と表現され,彼独自の音楽を確立します.   さて,この映画はマイルスの栄光期以降,腰痛で悩まされながら鎮痛薬やドラッグに溺れていた暗闇の5年間を伝記として残そうとしたもので,主役のドン・チードルはマイルスのしわがれ声や小柄な背丈(167cm)まで本人そっくりで見事に演じています.スクリーン上でのマイルスは常に煙草をくゆらせ,煙にむせぶような退廃的なムードはこれまたマイルスサウンドの一面を想わせます.  このところ深夜にマイルスの名盤「カインド・オブ・ブルー」に耳を傾けながらウイスキーを味わうことが多いのですが,映画館で聴いたサウンドは迫力と臨場感がありました.これだけの臨場感を自宅のオーディオで得るには昼間に聴くしかありませんね.

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