2023年4月11日火曜日

戦時下の芸術家

先日,NHKの録画を見ました.ナチス独裁政権下でのベルリンフィルと指揮者フルトヴェングラーの活動を追った記録映像ですが,まずはフルトヴェングラー自身についてほとんど映像を見たことがなかったので大変貴重な記録だと見入りました.音楽評論などでは彼独特のテンポを揺らす指揮法について,メトロノームのごとくテンポにこだわるトスカニーニの指揮と比較対照されたものでした.録画では当時のファシストに反対するトスカニーニが,ナチス下で演奏するフルトヴェングラーとは一線を画す行動として語られておりました.いかにもナチス政権に迎合したかのようなフルトヴェングラーではありますが,背景にはベルリンフィルを戦時下でも存続させるための手段ともいわれます.戦況の悪化にもかかわらず,楽団員が徴兵されなかったのはフルトヴェングラーの行動が働いていたようです.

スターリン政権下のショスタコーヴィチも当時の独裁政治に翻弄された芸術家の一人として有名です.圧倒的な迫力で迫る5番や7番交響曲は国家啓蒙に利用されましたが,楽譜には密かに反戦メッセージを込めたとの逸話もあります.

こうした戦時下の芸術家の想いを背景に今一度,その作品を味わうのも一興ですね.

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