昨日のカラヤンの「悲愴」は凄まじい演奏でした.第3楽章はロシア軍の行進を表していると思うのですが,スラブ風というよりゲルマン的な厳格さの際立つ演奏でした.それでも不自然さを感じないのはチャイコフスキー自身がヨーロッパの音楽界に憧れを抱きつつ作曲していたことによるのかもしれません.第4楽章の絶望的な美しさはカラヤンならではのものでしょう.絶対的権力者であったカラヤンが図らずも背負っていた悲愴感が感じられます.
さて,本日はバーンスタインによるマーラーの5番です.演奏はベルリン・フィルと双璧をなすウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で,1972年,ウィーン楽友協会大ホールでの録画です.
マーラーのシンフォニーとなると長時間を覚悟しなければなりませんが,5番は比較的馴染みやすく,特に第4楽章のアダージェットは映画「ベニスに死す」(ヴィスコンティ監督)の印象的な場面で流れ有名になりました.この楽章が始まるとついついベニスの浜辺の映像が蘇ってきます.バーンスタインとウィーン・フィルによるアダージェットは美しさの極みともいえる素晴らしい演奏で感動的でした.久々にマーラー5番を聴き通しましたが,鮮明な映像とウィーン・フィルのきらびやかな音響を存分に楽しむことができました.
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