そんな時,市内にある映画館のひとつ東宝会館では「午前十時の映画祭10」というイベントが開催されていて,なんと丁度いま,「ベニスに死す」がデジタル復刻版として上映されているではありませんか.こりゃ劇場で観るしかないってことで本日行ってまいりました.
主役ダーク・ボガードの迫真の演技,ヴェネツィアの風景など引き込まれずにはいられませんでした.バックにながれるマーラーのアダージェットは否応にも情感を昂らせます.マーラーが主役に設定されているのです.芸術家の繊細さ,潔癖さ,葛藤などが観光都市ヴェネツィアが抱える課題と微妙に絡み合い複雑な印象を残します.
ヴェネツィアは近年,海水による浸水が頻発し,数十年後には町全体が水没の危機にさらされています.私が13年ほど前訪れた時はそうした問題はそれほど取り沙汰されておりませんでしたので,急速に地球温暖化の影響が現れ始めたのかもしれません.国連では一人のスウェーデン少女による悲痛な叫びが大人たちに警告を発しています.こんな世界をヴィスコンティが想像していたのかは知る由もありません.
ところで本作品の中で,ホテルの客相手に民謡などを演奏する楽団が登場しますが,一人の女性が弾いていたマンドリンはルイジ・エンベルガー5bisのように見えます.マンドリンのストラディヴァリと呼ばれるほどの最高級品です.思わず見入ってしまいました.
静岡東宝会館
午前十時の映画祭10
秋晴れの七間町通り
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